初心者の段階では韓国語の助詞の「-이/가」は日本語の助詞の「〜が」、韓国語の助詞の「-을/를」は日本語の助詞の「〜を」などと習いますが、必ずしもそうなるとは限りません。例えば韓国語の助詞の「-이/가」は日本語の助詞の「〜が」よりも守備範囲が広く、「〜では」「〜に」「〜は」と訳されることがあります。
Author について
東京外国語大学、津田塾大学、聖心女子大学などで韓国語・朝鮮語や韓国社会論を教えている。九州大学で博士号を取得。NHK出版の『ハングル練習帳』にコラムを書いたり、日本最大手の韓国語学校であるK-Villageの教科書を2冊執筆。JYJの記者会見をはじめ韓流アイドル関連や国際会議の通訳の仕事も。
この前「이름이 뭐예요?」って聞かれたけど「이름은」じゃないの?
最初に何かを聞くときは「는/은」じゃなくて「가/이」が自然なんだ。
でも助詞の「は」は「는/은」って習ったんだけど。
「는/은」の場合が多いけど、そうならない場合もあるんだ。
「-이/가」が「〜では」「〜に」と訳される場合
韓国語の助詞「-이/가」はよく日本語の助詞の「〜が」と説明されますが、それだけではないので気をつけてください。韓国語の助詞の「-이/가」は、主に3つの用法があります。
1. が
어떤 상태나 상황의 대상이나 동작의 주체를 나타내는 조사.
ある状態・状況の対象や動作の主体を表す助詞。2. では。に
바뀌게 되는 대상이나 부정하는 대상임을 나타내는 조사.
変わる対象や否定する対象であることを表す助詞。3. が
出典:国立国語院 韓国語-日本語学習辞典 이7助詞より
앞의 말을 강조하는 뜻을 나타내는 조사.
前の言葉を強調する意を表す助詞。
ここで2番目の用法について注目しましょう。「〜では」「〜に」と訳される点に注意してください。
最初に「変わる対象」と書いてありますが、具体的には되다と一緒に使われると「이/가」は「〜に」と訳されます。
아침이 됐어요.
朝になりました。
これを「朝がなりました」と訳すと不自然です。また日本語から韓国語に訳すとき、単純に「〜に」は「-에」だと考えて(誤)아침에 됐어요と書かないように気をつけてください。
次に否定する対象とありますが、아니다と一緒に使うと「〜では」と訳されます。
친구가 아니에요.
友達ではありません。
このように韓国語の助詞「-이/가」の2番目の用法では、「〜が」ではなく「〜では」「〜に」に訳されるので気をつけくてください。
「-이/가」が「〜は」と訳される場合
次に注意してほしいのが、最初に何かを聞くときです。
이름이 뭐예요?
名前はなんですか。
日常会話でよく出てくる文章ですが、この이름이 뭐예요?を「名前がなんですか」と訳すと不自然です。自然な訳は「名前はなんですか」、つまりこの文章において韓国語の助詞「-이/가」は日本語の助詞の「〜は」で訳されます。日本語から韓国語に訳す時も「名前はなんですか」をの「〜は」は「-은/는」だと考えて이름은 뭐예요?と訳しがちですがこれは不自然で、이름이 뭐예요? と言う方が自然です。
何故なのかと言うことを簡単にだけ説明します。日本語も韓国語も「新情報」の場合は助詞の「〜が」と「-이/가」を使い「旧情報」の場合は、助詞の「〜は」と-은/는を使います。ただし日本語と韓国語は疑問文の場合、わからないことを「新情報」として扱うか「旧情報」として扱うかに違いがあると言われています。ただ「韓国語は最初に何かを聞くときは、은/는ではなくて、이/가を使う」と覚えてもらっても基本的には大丈夫です。
トイレを探している時も、화장실이 어디예요?とするのが自然な韓国語です。もちろん이름은 뭐예요? 화장실은 어디예요?と言う言葉も可能ですが、最初に質問をするときに「-은/는」を使うと不自然で、「-은/는」を使うと例えば先に何かを聞いた上で、「それでは名前はなんですか」「それではトイレはどこですか」と言う対比のニュアンスになります。
参考に「-은/는」の用法を紹介すると、こうなります。
1. は
어떤 대상이 다른 것과 대조됨을 나타내는 조사.
ある対象が他のものと対照的であることを表す助詞。2. は
문장 속에서 어떤 대상이 화제임을 나타내는 조사.
文章の中である対象が話題であることを表す助詞。3. は
出典:国立国語院 韓国語-日本語学習辞典 은1助詞より
강조의 뜻을 나타내는 조사.
強調の意を表す助詞。
韓国語の助詞の「이/가」=日本語の助詞の「が」、韓国語の助詞の은/는=日本語の助詞の「は」と機械的に覚えると間違えることがあるので気をつけてください。
「-을/를」が「〜に」「〜を」と訳される場合
次に気をつけて欲しいのは、韓国語の助詞の「-을/를」です。韓国語の助詞の「-을/를」は、最初に日本語の助詞「〜を」にあたると習うことがほとんどです。ただこれも「-을/를」=「〜を」と覚えると間違える場合があります。助詞の「-을/를」は「〜を」以外にも、「〜に」「〜が」と訳される場合があります。韓国語の助詞の「-을/를」は目的格助詞、目的を表す助詞と覚えるようにしてください。以下、「-을/를」が「〜を」と訳されない具体的な例を4つ紹介します。
①「〜に行く」と言う場合、目的地なら韓国語の助詞の「-에」を使いますが、目的の場合は韓国語の助詞の「-을/를」を使って、日本語では「〜に」で訳されます。
서울에 가요.
ソウルに行きます。
여행을 가요.
旅行に行きます。
(誤)여행에 가요とよく間違えるので気をつけましょう。また同じように、
산에 가요.
山に行きます。
등산을 가요.
登山に行きます。
となります。
②「〜に乗る」という場合は助詞の「-을/를」を使って「〜に」と訳されます。
【正】전철을 타요. 電車に乗ります。
【誤】전철에 타요. ←基本的には間違い
「〜に」は「-에」と機械的に当てはめると間違えるので気をつけてください。
③「〜に会う」の場合も、韓国語の助詞の「-을/를」を使って「〜に」と訳されます。また「会う」は만나다以外に보다も使えます。
【正】친구를 만나요. 友達に会います。
【誤】친구에 만나요
④좋아하다, 싫어하다の場合も助詞の「-을/를」を使って、日本語では「〜が」と訳されます。
음악을 좋아해요.
音楽が好きです。
공부를 싫어해요.
勉強が嫌いです。
またこれも間違えやすいのですが、좋다, 싫다の場合は、「-이/가」を使います。
음악이 좋아요.
音楽が良いです。
공부가 싫어요.
勉強が嫌です。
よく、(誤)음악이 좋아해요, (誤)공부를 싫어요と間違えてしまう場合があるので、気をつけてください。
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